IMPRESSION

ウインドサーフィンの街「横須賀」から、
驚きの技術を「世界」に届けたい

N-Sports tracking Lab 合同会社
代表 横井愼也 様
PROFILE
愛知県出身。富士通株式会社でシステムエンジニアとして顧客向けのシステム開発に携わってきた。
一方で、ウインドサーフィンのアマチュア選手でもあり、2016年、富士通社内で新ビジネス創出を目指す人材育成が始まったことをきっかけに、ウインドサーフィンとテクノロジーを組み合わせた新しいシステムの開発にチャレンジ。ウインドサーフィンのスピードや乗り方をセンシングし上達を支援するシステムは、プロ選手やトレーナー、大会運営者などの間で瞬く間に広がり、2019年に横須賀を拠点として独立・創業することに。
横須賀のここがおすすめ!
  • スポーツの国際大会を多数開催
  • 横須賀リサーチパーク(YRP)に、テクノロジー研究開発企業が集結
  • 海と山、まだまだ可能性のある豊富な観光資源
  • 米軍基地があり、国際的な雰囲気
ウインドサーフィン選手とエンジニア、二つの顔を持つ横井様。
「ウインドサーフィンが上手くなりたい」という横井様個人の想いから生まれた技術が、多くのトップクラス選手や国際大会を支えるようになりました。
スポーツにかける熱い想いや今まで取り組まれてきたこと、創業の地に横須賀を選んだ理由など、じっくりとお話を伺いました。
(取材:2023年6月)
Q. N-Sports tracking Lab 合同会社はどのような事業を展開されているのですか?

選手の動きをリアルタイムでトラッキングできるシステム「HAWKCAST」を開発、
サービスを提供
まずは、ウインドサーフィンの出会いからお話すると、本当に偶然で。2011年に愛知から東京に転勤することになり、右も左もわからない時にご近所で偶然知り合った方からウインドサーフィンの道具を譲り受けることになったんです。もともとスポーツは得意な方だったのですが、ウインドサーフィンは道具を使いこなすのが非常に難しかったことで、なんとか上達したいという気持ちが燃え上がっていきました。
そんな中、練習中に怪我をしてしまい、1年ほど海にいけなくなってしまった時期がありました。ちょうど富士通社内で新事業開発にチャレンジするための人材育成が始まったタイミングで、「自宅でも上達できるような装置を開発したい!」という想いを伝えたら、ぜひ社内でやってみようと新しい組織でチャレンジする機会に恵まれ、海の上でウインドサーフィンの動きをセンシングできる装置を一から自分で開発しました。社内の専門家からは反対されましたが、実際データをとってみたら、上手な人と自分との色々な差が見えたので、「これは絶対に製品化できる」と確信を持ちました。2016年のことでした。
横須賀のウインドサーフィンW杯で得た気づき
翌年2017年に横須賀でウインドサーフィンW杯の最初の大会が開催されることになりました。私もぜひ携わりたいということで、開発していた能力開発用のシステムを大会会場で展示させていただくことができました。すると、海外の有望な若手選手たちから「まさにこういうものを求めていた」という声をいただき、手応えを感じました。
また、W杯の現場で気がついたことは、1kmの沖合で展開されるレースの状況が全くわからないということです。これでは観客のみなさんもあまり楽しめないのでは・・・ということで、翌年の大会までに、GPSの位置情報とリアルタイムで連携して、海の上の状況が手にとるように「見える化」できるものを作りたいと考えるようになりました。
世界初、
1秒間隔で送信可能なGPSデバイスを開発
今まで、GPSの主な用途はこどもなどの見守りで、3分に1回しか位置情報をとっていませんでした。ウインドサーフィンはスピードがとても速く、なんと時速50〜60km!刻々とレース状況が変わっていくので、1秒間隔で位置情報を送信するデバイスを開発する必要がありました。1ウインドサーファーとして、このスポーツの魅力をもっと知ってもらいたいという想いがありドローンで撮影したような3Dで立体的に表現する方法など、見せ方にもこだわって開発してきましたね。2018年のW杯では、そのプロトタイプシステムを導入することができました。
上達するのが難しかったウインドサーフィン
W杯で展示会を開催
競技中にも邪魔にならない小型のデバイス
データの力で挑むパリオリンピック
W杯が終わってからは、再度トレーニングの方に意識が向いていきました。まずは、自分が速くならないと選手に信じてもらえないので、データを活用しながらスピードを上げるトレーニング方法を模索しました。データは客観的に自分の実力を測る、謂ば体重計です。月に1回海に行けるか行けないかという生活をしながらも、「こうすれば速くなるんじゃないか」という仮説とデータで検証しつつイメージトレーニングをするくらいしか時間がとれない日々ですが、昨年の全日本アマチュア選手権オープンクラスで優勝するまでに上達することができました。プロの道も見えてきたかな、と思います。
実は今、パリオリンピックの日本代表を目指す選手のトレーニングに関わらせていただいていて。NTT横須賀研究開発センタ様の協力のもと、津久井浜で世界最先端のITトレーニングを行っているんです。日本選手の課題は、海外選手との体格の差。データをとってわかった差を埋めるためには、どういった練習が必要なのかを地道に実践しているところです。
選手のみなさんには、ひたすら練習するだけではダメで、目標をたてて、仮説検証をしていくことが大切だと伝えています。なぜ速くなるのかが説明ができないと、たまたまだったりして再現性もないですし、後進も育っていきませんから。経営者としての視点が、スポーツにも活かされているなと感じています。
データの力で、全日本アマチュア選手権オープンクラス優勝
Q. 創業の地に横須賀を選んだ理由を教えてください。

ウインドサーフィンのメッカ
横須賀に足を運ぶようになったのは、ウインドサーフィンW杯がきっかけでした。全国でも有数のウインドサーフィンの街ですので、横須賀にも盛り上がって欲しいという想いもあります。
というのも、まだまだマイナースポーツのウインドサーフィンをメジャーにしていくためには、スポーツだけ頑張っても上手くいかなくて。例えば、お父さんがウインドサーフィンをやっているとして、ご家族からは、お父さんばっかり楽しんで子供は楽しくないからと、「お父さん、行っちゃダメ。」「またウインドサーフィンに行くの?」と言われるという話をよく聞きます。ウインドサーフィンに行った後にも楽しめるスポットが必要で、まちづくりや地域活性化が必要なんですよね。
横須賀市さんは色々な取り組みをされていますし、海・山・自然の豊かさが魅力的だと感じていますので、ウインドサーフィンW杯を一緒に盛り上げるためにも、ここで会社を始めようと思いました。
「世界」を目指すために
もう一つ、横須賀には情熱的・個性的な起業家さんが多く、市役所の裏にもシェアオフィスがあるんです。そこのみなさんのキーワードが「横須賀から世界へ」というところにも惹かれました。ウインドサーフィン選手としても会社としても、世界で活躍したいと思っていますので、横須賀からだと発信がしやすそうだなと感じました。
横須賀市津久井浜での大会の様子
Q. 創業から現在に至るまで、苦労されてきたこと、
また、その苦労をどのように乗り越えられたかを教えてください。

新型コロナ期間を救ったW杯準備
起業したのが2019年で、新型コロナの感染拡大が始まる直前でした。2020年は国際大会もなくなって、「仕事がない、どうしよう」という状況になってしまうところでしたが、2019年冬、たまたまつながりができた内閣府の方から、「来年のウインドサーフィンW杯にむけて、高精度な位置情報が得られる日本の準天頂衛星『みちびき』を活用して欲しい」というお話をいただいていたことで、研究開発と実証実験を行うことができ、技術を研鑽することができました。
その後、2021年に開催された世界的なスポーツの祭典のセーリング競技にも大規模にHAWKCASTを導入させていただき、IOCの方々から「これはすごい」と好評をいただくことができました。選手だけでなく、運営に必要な船の動きも世界で初めてHAWKCASTがデータ化できたことで、パリで行われる次のイベントに向けて電気ボートが活用できるか検証するなど、よりエコで持続可能な競技運営ができるか分析することができたそうです。
「みちびき」の実証実験をしていた頃
Q. 「スタートアップオーディションin YOKOSUKA」にもご参加いただきました。
オーディションで得たものはなんでしたか?

全国のライバルとの出会い
2022年の夏に、起業家によるプレゼンオーディション、「スタートアップオーディションin YOKOSUKA」に参加させていただきました。横須賀の多くの協賛企業様から賞をいただけ、また本イベントは「起業家万博」に繋がる地区大会となっており、その出場挑戦権となるNICT賞も受賞させていただきました。結果、起業家万博へも出場させていただくことがきまり、今まで全国の起業家同士のつながりはあまりなかったのですが、切磋琢磨する全国のライバルと出会うことができて、とても刺激になりました。起業家万博でもパートナー企業特別賞として、クラウドワークス賞、CiP協議会賞、JETRO AWARD賞をいただくこともでき、日本を背負って世界に持っていけるものを作らなければという気合も入りました。
よりメジャーなスポーツへの展開
「スタートアップオーディションin YOKOSUKA」でNTT東日本賞も受賞させていただき、そのNTT東日本様はトライアスロンの世界大会「トライアスロンワールドシリーズ」のメインスポンサーでもあり、ここからトライアスロンとのつながりが生まれました。それがきっかけで、今年の5月に横浜で開催されたワールドシリーズにHAWKCASTを導入することができました。ウインドサーフィンだけでビジネスを発展させていくのは難しく、よりメジャーなスポーツに参加できないかと考えていたところだったので、本当にありがたかったです。
トライアスロンも、試合の状況を把握するのがとても難しい競技です。観客のみなさんも、応援している選手がどこにいるかがわかるようになって、コースを先回りして待機できるようになり、応援が楽しくなったとおっしゃっていました。
Q. これから横須賀市とのタッグで実現していきたいことを教えてください。

スポーツ・観光・テクノロジーの融合
BMXの国際大会もありますし、横須賀市さんはかなりスポーツに力をいれている自治体ですよね。スポーツが盛んだと、世界の選手が日本に来てくれて、日本の技術に触れる機会が多くなります。これからも継続的に大会を誘致していただくことで、日本のテクノロジーが世界に広がる起爆剤になっていくんじゃないかと思っていますので、一緒に盛り上げていきたいです。
その他にも、横須賀市には魅力的な観光スポットがたくさんあります。まだあまり知られていないスポットもたくさんありますよね。そこで弊社の位置情報の技術を使ってみるというのも面白そうです。観光客がどういう導線でまわっているのか、データをとるだけでも、整備に注力すべき場所がわかったりして、都市計画にもつながると思います。
弊社の技術でお役に立てることがあったら、こちらからもご紹介していきたいと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
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